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CROWN English Communication 2 Reading 2 和訳
A Fall before Rising
ジャイ・ジャイクマールはインドで大学教育を受けました。 その後、アメリカに留学し、アメリカの大学で教鞭をとりました。 インドで育った彼は、いつも山登りが大好きでした。 登山が上手になってきた彼は、ヒマラヤに登ることを決意し、そこで人生を変えるような経験をしました。
1966年のある夏の日、私はヒマラヤの24,000フィートの山頂で、親しい友人と一緒に立っていました。 午後4時にはすでに暗くなってきていて、景色を楽しむ時間はほとんど残っていませんでした。
私たちの最後の登りは、その日の朝2時の高所キャンプの場所から始まっていました。 それは予想以上に荒れていました。 夜には無事にキャンプに戻れるよう、午後1時を登山中止の時間に設定していました。 しかし1時になったとき、先へ進むことに決めました。
私たちは頂上に辿り着きましたが、時間に追われていることを自覚していました。 僅かな時間でお祝いをした後、下山し始めました。
風で雪庇(せっぴ)ができてしまった危険なルートを私たちは辿っていきました。 それがどれほど危険かを知っていたので、友人と私は私たちを繋いでいたロープをほどきました。 いまや私たちのどちらかが滑落しても、一方は他方を引きずり込んで死なせることはないでしょう。
私が先頭に立っていました。 次の一歩を踏み出そうとした時、大きな音がしました。 雪庇が落ちてきたので私は片方に飛び、友人はもう片方に跳びました。 私が着地した時、あまりにも急勾配だったので、滑って転び始めました。 一瞬のうちに、私は時速60マイルで山を滑落していました。
スピードをコントロールできませんでした。 みるみるうちに迫ってくる巨岩に当たらないように雪と氷の中に強く足を押し込みました。 ようやく止まりました。 私はその傾斜を1マイル半以上も転げ落ちていました。
私は血まみれになって震盪(しんとう)を起こしました。 動こうとすると激しい苦痛が伴いました。 周りを見渡してみましたが、友人の姿は見えませんでした。 私たちのキャンプ地とは他方の反対面に落ちてしまったことに私は気付きました。 しかし引き返すことは不可能でしょう。
意識を失う前にもっと遠くへ降りて行って助けを見つけない限り、チャンスはないと思っていました。 歩けなくなるまで私は歩くことにしました。 残りの時間を歩いて夜になりました。 あの数時間のことはほとんど言葉で述べることができません。 恐ろしい孤独、身体の痛みと寒さ、そして友人がほぼ確実に死亡したという認識。
突然、遠くで犬の吠える声が聞こえました。 人の生活がこの先にある!と気力が出ました。 子どもの笑い声が聞こえてきました。 私は移動を続け、小さな小屋にたどり着きました。
倒れて目を覚ますと、40歳くらいの小柄な女性が食べ物と水を差し出して、理解できない言葉で話していました。 何時間かは女性が差し出してくれた食べ物と水を受け入れることしか私にはできませんでした。 痛みがひどくなって私は動けなくなっていました。
驚いたことに、隣りの村まで私を運んで山を下っていこうとしていることをその女性は示しました。 彼女は私を背中に乗せて、500フィートほど歩いてから、彼女が休めるように私を下に降ろしました。 彼女は水を飲み、私にも水を与えてから、私をまた背中に乗せてくれました。 私たちはこのようなやり方で一度に数百フィートずつ、丸3日間続けました。
隣りの村に着くと、ロバの背に私を乗せて病院のあるもっと大きな村へ連れて行くように女性は役人に頼み込みました。 親切にしてくれたことや助けてくれたことに対して、その女性は一切のお金を受け取ることを拒否しました。 私が無事であることを知って、彼女は嬉しそうでした。 彼女はただ手を振って別れを告げて家路につきました。
その村から二日間、ロバに乗りました。 その間、私は全体の状況を別の形で見るようになりました。 自分の人生がいかに脆いものであるか、自分の身の回りの状況がいかに一瞬で変わってしまうのかを実感しました。 お礼も求めずにたくさんの施しをしてくれた女性の優しさの源について考えていました。
ようやく病院に到着しました。 治療をしてくれた先生は、怪我は重症だけど回復するだろうと言ってくれました。 身体の回復は早かったのですが、滑落したことや友人の死、その後に起こった出来事が頭から離れませんでした。 回復していく間、自分がどれだけ幸運であったかわかるようになりました。 雪庇から正しい方向に飛び移って幸運にも生き残れたこと、滑落したあと幸運にも正しい方向に歩いたこと、幸運にも女性に助けられたこと、幸運にも以前と同様にまで回復していること。 自分の成功はすべて幸運の結果であり、自分よりも運の悪い人を助ける義務があることに気がつきました。
滑落から一年も経たないうちに、助けてくれた女性の優しさをいつも思い出しながら、なんとか恩返しをしたいと考え、彼女の村に戻ることを計画しました。 私には考えがありました。 学校を作り、子どもたちに教育の機会を与えることで、村人の「運」をよくすることはどうでしょうか。 それから数ヶ月かけて、教員にお金を払ったり、学校を建てたりするための資金を集めました。
1つの学校を作ろうとする私の考えは使命にまで成長しました。 滑落から30年で、私はアメリカに移住し、大学院の学位を取得し、大学の教授となりました。 それでもずっと遠隔地の学校の校舎建設や運営を支援するための資金調達を続けてきました。
登山が好きだった私はヒマラヤの山を登るようになりましたが、私の滑落の経験は、世界に対する考え方を形成し、すべての生徒にアドバイスをすることにつながり、私をより大きな高みに到達させました。 この世界の自分の運、先生や愛情深い両親から与えられた「運」に気付いてください。 何よりも、幸運によって作られた責任を認識してください。
成功は幸運から生まれ、義務は成功から生まれます。 他人のために幸運を創造することで、あなたは最高度の山頂に到達できるでしょう。
単語
- Jai Jaikumar:【名詞】ジャイ・ジャイクマール
- Himalayas:【名詞】ヒマラヤ山脈
- summit:【名詞】山頂
- make it back to ~≒go successfully back to ~:~に無事に戻れるように
- time was against us≒we had only a short time:僅かな時間しか残されていない
- celebration:【名詞】祝賀、称揚
- route:【名詞】道、道筋、ルート
- cornice:【名詞】雪庇(せっぴ)、山頂などの雪が強風によって張り出した雪の塊
- untie:【他動詞】~をほどく
- drag:【他動詞】~を引く、引きずる
- be in the lead≒be ahead:先頭に立つ
- beneath:【前置詞】~の下に
- steep:【形容詞】急勾配の、険しい
- slip:【自動詞】滑る、ずり落ちる
- within:【副詞】~内に
- avoid:【他動詞】~するのを避ける
- race up at ~≒come at ~ very fast:とても速く向かってくる
- slope:【名詞】坂、斜面、傾斜、勾配
- be covered with ~:~で覆われて
- concussion:【名詞】震盪(しんとう)
- agony:【名詞】激しい苦痛、もだえ苦しみ
- unless:【接続詞】~でない限り、もし~でなければ
- pass out:意識を失う、気絶する
- describe:【他動詞】~を説明する、言葉で述べる
- loneliness:【名詞】孤独
- physical:【形容詞】身体の、肉体の
- bark:【自動詞】(犬・キツネなどが)吠える
- in the distance≒far away:はるか向こうに、遠い所に、遠方に
- somewhere:【副詞】どこかに
- hut:【名詞】小屋
- collapse:【自動詞】倒れる、衰弱する
- not do anything but ~≒do nothing but ~:~しかしない
- indicate:【他動詞】~を述べる、示す
- set down ~≒put down ~:下に置く、降ろす
- donkey:【名詞】ロバ
- fragile:【形容詞】壊れやすい、もろい
- circumstance:【名詞】事情、状況
- in an instant≒in a moment:あっという間に
- arrive at ~≒reach ~:~にたどり着く、到着する
- injury:【名詞】傷害、危害、損傷
- recovery:【名詞】(病気などからの)回復、全快
- obligation:【名詞】義務、義理
- think of ~≒think about ~:~のことを考える、思い出す
- repay:【他動詞】~に恩返しする、報いる
- Why not ~ ?≒How about V-ing?:~してはどうでしょうか
- villager:【名詞】村人
- raise money≒collect money:金策する、金を工面する
- earn:【他動詞】~を取得する
- professor:【名詞】教授
- height:【名詞】高いこと、高いところ
- appreciate:【他動詞】~を認識する、察知する
- be born (out) of ~≒come out of ~:~から生まれて、~生じる
- peak:【名詞】山頂、最高点
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